冷凍みかんが空けた穴
こんにちは、東京の水玉オリジナルバッグブランド「Saori Mochizuki(サオリモチヅキ)」のデザイナー望月沙織です。
時々思い出しては、ぎゃーっとなる冷凍みかんの話があります。
小学生の頃、何となく憂鬱で誰かに甘えたく、でもうちの親はそういうことを受け止めてくれる人でもなかったので、考えあぐねた結果、お腹が痛い…ということにして、保健室で寝かせてもらうことになりました(あるある)。
しばらく寝ていたら、給食の時間がやってきました。食が細かったので残すことが許されなかった当時の給食は、これまた憂鬱な時間だったのですが、保健の先生が運んできてくれたその日のメニューは奇跡的に全部好きなもの(含む:冷凍みかん)。
独りでのんびり食べられる嬉しさと相まってテンションが上がり、珍しく一気に完食しかけたところで、ハタと気付く…。
いかん、わたくしは腹イタで今ここにいるんだった。。。
保健の先生に仮病がバレ、親に猛烈に怒られるんじゃないかと急に怖くなり、大葛藤の末、冷凍みかんは泣く泣く残すことにしました。
下膳に来るであろう保健の先生に備えて、
「お腹が痛くてみかんまで食べられませんでした」
を、布団に潜って呪文のように唱えて待っていると、やって来たのはクラスメイトのコガワくん。
えっ、、、と拍子抜けするわたくしをよそに、
「どっか調子が悪いの〜?とりあえず片付けてって言われたから持ってくねー」
と、あっさり食器を持ち去ってしまいました。
コガワくんの肩越しに、空のアルミのお盆に載って遠ざかるわたくしの冷凍みかん…。
わたくし、我がお子には、
「自分の本音や本当にやりたいことを隠して違うことを言い訳にすると、ロクなことはない。
やる気が出ないからサボりたいならサボりたいってちゃんと言ったらいい。
でないと、相当デカいものを失うことになる」
と、この時の冷凍みかんを念頭に常々言い聞かせています。
なかなか自分の気持ちを素直に表現するのは難しい。
でも、素直に表現しても受け止めてもらえる場があるという実感が得られれば、お子も、自分の欲望に真っ直ぐにきれいに直線を引けるのではないか。
大人になって何度冷凍みかんを食べても、埋められないあのみかんの穴。
そんな凹みがお子に生じないよう、お子の素直な欲望を受け止めてあげられる大人でいたいと思っています。
<今日のバッグ>
Spin Off(PVC加工リボンとトートバッグ)ピンクユニバース
New World mini(スマホショルダーポシェット)SACCO
東京「日常をドラマチックにする」バッグ
Saori Mochizuki
デザイナー 望月沙織