才能がなくても
こんにちは、東京の水玉オリジナルバッグブランド「Saori Mochizuki(サオリモチヅキ)」のデザイナー望月沙織です。
衝撃波を浴びた徳川家光の絵で思ったことのお話しです。
東京・府中市美術館
開館20周年記念
日本とヨーロッパ
ふしぎ・かわいい・へそまがり
2021年11月28日まで
まず家光の絵をヘタだという人は、きっと本気で絵を描くために筆を握ったことのない人です。
あまり絵を描いた経験がないという人は試しに一度、なんでもいいから描いてみたらいいと思いますが、びっくりするほど思う通りに手が動きません。
とてもじゃないけれど、いきなりやってこの家光の絵レベルの線が引ける人ってほとんどいません。
家光の線には、そんな、一朝一夕には成り立たない、それなりの奥行きがあります。
だからと言って、家光が、本当はものすごく描ける人なのにあえてレベルを落として描いている、ということもないでしょう。彼ほどの地位にいる人が、そうする必要性って、どこにもありませんから。
また、
家光は将軍です。(略)日頃から一流の書画に親しんできたので、どんな絵がいわゆる「上手い」絵なのか、ということはもちろんわかっていたでしょう。
ー動物展日記より抜粋
つまり家光は、絵を描くことが純粋に大好きだったのです。
うちのお子も、気に入ったモスラやゴジラの絵を何度も描いていますが、みみずくの絵を何枚も残している家光に同じ匂いを感じます。
そうやって何度も何度も、一流画家に手ほどきを受けながら描いていたのでしょう。
じゃあ本当は画家になりたかったんじゃないの?
もしそうだったとしたら、徳川家に生まれたこと(=生まれながらにして職業が定まっている)は不幸だったのでは、と考えましたが、多分、それもない。
家光はやっぱり、征夷大将軍である自分にも満足していたはずです。
そうでなければ、あんなに伸びやかに描き続けることはできません。
どちらかというと、
「生まれながらにトップにいられて、その環境のおかげで大好きな絵を一流の人から学べてラッキー」
くらいに思っていたでしょう。
むしろ絵でなんとか身を立てよう、なんて力むことがなかったからこそ、あの独特の丸くてファンシーな世界観が生まれたんだと思います。
と、ここまで書いて、ふと、ものすごく対照的な人物が頭に浮かびました。
それは、ヒトラーです。
星新一のショート・ショートに、
「ある青年が自作の絵を持って画商のもとへ行ったところ、買ってもらえないどころか、ものすごく酷評された。その画商はユダヤ人で、その青年はのちに『ヒトラー』として知られることになる」
なんていう、フィクションかノンフィクションかなんとも言い難い気味の悪い話がありますが、そもそもでいうと、ヒトラーは本当は絵で世に出たかった人です。
でもそれは叶わず、最終的には最悪な形で世界を牛耳ろうとしました。
そのヒトラーが、もし仮に絵で「挫折」を感じても、それを補って余りある「1位」を保障された環境に生まれていたとしたら、あんな悲惨なことはしでかさなかったのではないか。
そんなことが頭をよぎったのです。
もちろんそんなのはたらればですし、実際にヒトラーがやったことはとてもじゃないけれど肯定できるものではなく、彼を擁護するつもりは全くありません。
ただわたくしは、彼が若いころに描いたとされる絵を見ていると、描いても描いても何者にもなれない現実に直面した時、どんな気持ちになったんだろうと考えてしまって、なんだか胸が詰まる思いがしてしまうのです。
そんな陰りが、家光の絵には全くありません。
楽しくて楽しくて仕方がない、という空気に溢れていて、それが、みるものを惹きつけるのです。
そんなこんなを、自分の生き方・お子の人生に思いを馳せつつ、見学してきました。いろんなヒントをもらったような気もします。
またみる機会に恵まれたらいいな。
12月のわたくしの個展イベントもどうぞ宜しくお願い申し上げます。
個展販売イベントの会場が決まりました<2021年12/18(土)〜19(日)@中目黒ギャラリー(NO DESIGN GALLERY)>
Saori Mochizuki 個展販売イベント
2021年12月18日(土)、19日(日)
開催時間:調整中(追って告知致します)
会場:中目黒ギャラリー(NO DESIGN GALLERY)
東京都目黒区上目黒1-7-2
(1LDKというセレクトショップの隣)
中目黒駅から徒歩3分
!!以前Accent Colorの実店舗があった場所とは異なります!!
東京「日常をドラマチックにする」バッグ
Saori Mochizuki
デザイナー 望月沙織