子供を殺し屋にしないためには/映画「ザ・コンサルタント」(ベン・アフレック主演)
(「ザ・コンサルタント」の予告編キャプチャー画像)
こんにちは、東京の水玉オリジナルバッグブランド「Saori Mochizuki(サオリモチヅキ)」のデザイナー望月沙織です。
来年(2017年)1月21日公開予定の映画「ザ・コンサルタント」を拝見しました。
「ザ・コンサルタント」
監督:ギャビン・オコナー
主演:ベン・アフレック
http://wwws.warnerbros.co.jp/consultant-movie/
赤い色を見たことのない人は、赤を語れない。
そんな言葉がぴったりの映画だな、と思いました。
ベン・アフレック演じるクリスチャン・ウルフは、高機能自閉症スペクトラムです。
数字には驚異的な能力を発揮するものの、いわゆる社会性に欠け、こだわりが強く、うまく人間関係を築くことができません。
そんな彼を、「自分なり」のやり方で育て、生きていくスベを身につけさせようとした彼の父親。
お話しは、全てこの父親の教育方針に端を発します。
人と違うことで社会から孤立していくであろうクリスチャンの将来を悲観した父親は、彼がこの世の中で生き抜いていけるようにと、幼い頃から徹底的に戦闘的武術を叩き込みます。
内向的で青白い顔をしたクリスチャンは、どうみたって武術に向くタイプではなく、そんなことを無理してやらせるよりかは、専門家も舌を巻く数学の能力を延ばしてあげる方がよっぽどマシなのに、父親の中にはそんな選択肢は微塵も存在しません。
なぜならば彼は軍人であり、戦いの能力で人生を切り開いてきた人間だからです。
それ以外のやり方を、知らなかったのです。
結局クリスチャンは、会計士でありつつ、闇の社会で暗躍する殺し屋という二面性をもった人生を歩むことになります。
どうしてそんな極端な人生を歩むのか?
ぱっと見はとても不可解に思えます。
でもクリスチャンにとっては、天才的な数学の能力と、徹底的に仕込まれた戦闘能力という、自分が持ち得る2つの才能を素直に活かしたらそうなっただけのことで、逆にいうと彼にはこれ以外の生き方は存在しないのです。
途中、彼の存在を追う財務省の犯罪捜査部は
「こんな危険な仕事をしていて、なぜ彼は闇の組織に消されないのか?」
といぶかしがりますが、コタエは簡単で、クリスチャンは、ただただ自分の人生を全うしているだけだから、なのです。
彼にとっては、数字に一貫性があり、父親から教え込まれた戦闘能力が発揮できた時点で全てが満たされてしまうので、普通(?)のチンピラがするような強請りや脅しには全く興味がなく、結果それが彼を生かしているのです。
文字通り死にそうになるまで武術を叩き込まれる幼いクリスチャンの姿を見ていると、彼の父親に憎しみの感情が湧きますし、もしも父親が軍人じゃなかったら、こんな過酷な人生を歩まずに済んだのに、と思わずにはいられません。
でもおそらくこれは彼の父親なりの最大限の愛情であって、罪を憎んで人を憎まずではありませんが、もし憎むとしたら、父親の、軍人以外の生き方を知らなかった経験値の薄さであって、父親そのものは、もしかしたら計り知れないほど愛情に満ちあふれた人だったのかもしれないな、と感じました。
現にクリスチャンの父親は、もっとも彼らしいやり方で、クリスチャンを救います。
これもまた、彼が軍人ではなかったら、もっと違った結末が待っていたのではないか、と思いますが、徹底的に自分流のやり方が貫けたという意味に置いては、ほかの誰よりも幸せな結果だったのかもしれません。
親になった今、自分だったらクリスチャンをどう育てるんだろう、ということばかりを考えてしまった2時間でしたが、改めて肝に銘じたことは、できうる限り、広い視野を持って生きていきたいということでした。
親の理想とする形を踏襲してくれたら、親としてはとても嬉しいけれど、果たしてそれが全てなのかどうか、子供の人生を極端なモノにしていないかどうか、立ち止まって考える余裕を持ちたいな、と噛み締めさせられた映画でした。
年明け、ぜひご覧になってみてください。
<2021年1月12日追記>
転載元のブログ(https://saorimochizuki.info/news/)には、
2017年2月16日10:37付で、「おさ」さんという方から下記のコメントをいただいておりました。
「私も父親が防衛大卒なので、同じことを思いました。
普通の生活を知る、ということは大切ですね。」
—<追記は以上>—
東京「日常をドラマチックにする」バッグ
Saori Mochizuki
デザイナー 望月沙織