唯一無二の宝庫
こんにちは、東京の水玉オリジナルバッグブランド「Saori Mochizuki(サオリモチヅキ)」のデザイナー望月沙織です。
少し前、コロナ禍の谷間に川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムへ行ってきました。
入り口にあった消毒液ホルダーのデザインをみて、入館前から感動。
これ、ドラちゃんの手ですよね。
これだけで世界観の全てが表現できるって、なんてすごいキャラクターなんだ、と改めて驚きました。
中にはドラえもんの原画などと一緒に、藤子・F・不二雄さんが、スタッフに宛てた直筆メッセージなどもたくさん展示されていました。
その中で、非常に印象に残ったものをいくつかメモってきたのでご紹介します。
自戒の意味もこめて言うのですが漫画は一作一作初心にかえって苦しんだり悩んだりしながら書くものです。お互い頑張りましょう。
「自戒の意味もこめて」という言葉に、スタッフに対する優しさや丁寧さが感じられました。
「初心にかえる」という言葉も本当によく耳にしますが、経験を積めば積むほど難しく、何が初心なのかすらわからなくなることもあります。
藤子・F・不二雄さんもそこに心を砕いたのかなぁと思うと、親近感が湧きました。
新しいプランを決めるにあたっては省エネも念頭に。つまり良く出てくるアングルになるべくややこしい家具などを配置しないとか・・・。
これは、映像の仕事をしていた人間としては、「めっちゃわかる〜〜〜!!」と思った言葉です。
映像制作会社時代のわたくしは、現場で撮影にかかる予算を管理する仕事を中心にやっていましたが、日々、どうしたら費用対効果が最大になるかに心を砕いておりました。
クオリティは高めたいけれど、予算は有限です。その狭間で、時には胃が痛くなるような戦いを強いられたりもしました。
なので、藤子・F・不二雄さんのような立場にいる人(クリエイティブの総監督)が、この部分を理解してくれているというのは、現場で動く人間にとってはとても助かることなので、つくづく藤子さんはすごい人だったんだなと感じました。
のび太の部屋に体温を与える徹底研究
その当時流行っていた家具やインテリアを雑誌などで調べてね、と言ったような指示も添えられていて、それらを総じて「体温を与える」と表現しているのがとっても粋だな、と思いました。
今っぽくしろ、でも、かっこよくしろ、でもなくて、体温を与える。
わたくしも、体温が感じられるバッグが作れるようになるのでしょうか…。
今時エアコンを無視するのも非現実なので古めかしいのをつけてやりましょう。
「つけてやりましょう」という言い回しに思わず笑ってしまいましたし、藤子さんの、なんとも言えない反骨心みたいなものも感じられます。
先ほどの「体温を与える」もそうですが、藤子さんの一言一言は、それ以外に言いようがない、と思えるほど的確で、でも決してありがちなものではない唯一無二な表現になっていて、そういった色んなことが、「ドラえもん」を始めとする代表作の数々を稀有な存在に押し上げて行ったのでしょう。
ちなみに館内には他にもユニークな展示品がたくさんあります。
わたくし達一家のお気に入りは「きれいなジャイアン」!
かの有名なイソップ童話を下地にした「きこりの泉」から、ズブズブと現れます。
コロナ禍でちょっとすいていたということもあり、お子は何度もレバーを操作して、きれいなジャイアンと対面してはゲラゲラ笑っておりました。
空き地の土管もあります。
藤子・F・不二雄さんのメモは全部見きれなかったので、また折を見て足を運びたいと思いました。
おトイレのインテリアも可愛かったです。
東京「日常をドラマチックにする」バッグ
Saori Mochizuki
デザイナー 望月沙織